光と色の話 第一部

光と色の話 第一部

第34回 色溫度と主波長

前回は色溫度および相関色溫度とはどういうものか、またその利便性についてお話ししました。
今回は、私たちの生活空間照明においての(相関)色溫度との関わりを説明します。
また、(相関)色溫度は「白色光源」にのみ適用できるものでしたが、有彩色光源に対しても、一つの數値のみで凡その色味が連想できると便利であるという同様な要求があります。
これに対して、「主波長(ドミナント波長)」という表現方法を説明致します。

人間の生活空間用照明の(相関)色溫度と心理効果

私たちの生活空間には、太陽光以外に様々な人工光源が使われています。生活空間の用途?目的に応じて、裝飾や什器備品だけでなく、その場をどのような光で照明するのかが、極めて重要です。

例えば、オフィスや教室など、活発に頭脳を働かせるに相応しい明るいスッキリした照明環境が求められる場合もあれば、喫茶店や家庭の居間、寢室などには、心理的にゆったりとリラックスした雰囲気が求められます。

このような照明空間の雰囲気作りに重要な影響を及ぼす要素が、照明光の色味(相関色溫度)と明るさ(照度)です。この 2 つの要素の組み合わせによって、私たちの感じる心理的印象は大きく変わります。

色が私たちの心理に大きな影響を與えることはよく知られています。特に基本的な心理効果として知られているのが、寒暖感(寒色、暖色)です。対象物の実際の物理的溫度には関係なく、赤~橙色系統の色は溫かみを、青~青紫色系統の色は寒冷感を覚えます。本來、溫度の感覚は人間の五感(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、觸覚)の內の觸覚で感じるもので、視覚とは別系統の感覚なのですが、視覚(色)を通じて心理的に溫度感を受け取っている訳です?※1?。

(相関)色溫度が低い照明光は、赤味がかって見えますので、心理的には溫かく感じ、(相関)色溫度が高い照明光は青白味がかって見えますので心理的には寒冷感を覚えます。(相関)色溫度値と心理的寒暖感とは、高低が逆の関係になっていることに注意が必要です。

右図のように橫軸に(相関)色溫度を、縦軸に照明の明るさ(照度)をとって、これらの組み合わせが人間の心理に與える影響を考えると、次のような傾向があると言えます。

(相関)色溫度が高めの白~青白い光色で、照度が低い暗めの照明の場合は、陰気な寂しい感じの雰囲気になりますが、同じ光色であっても照度が高い明るい照明になれば、清涼感のあるスッキリとした都會的な雰囲気の照明になります。例えば、デパートの化粧品売り場の照明はこのような照明になっていますね。

一方、(相関)色溫度が低めの赤味がかった光色で、照度が低めの照明の場合は、心理的に落ち著いた和んだ雰囲気を醸し出す照明になります。喫茶店や家庭の居間、寢室などの照明の雰囲気です。

ところがこの光色であっても照度が高くなれば、暑苦しい下品な感じを引き起こすような照明になってしまいます。

このように、心理的な快適性という面から評価すれば、右上図のように、(相関)色溫度と照度の組み合わせによって、全く逆方向に働くことになります。

蛍光ランプの光色

以上のように、様々な人間生活の場において照明の擔う役割は大きいものがあり、人間心理に大きな影響を與えます。従って、その場その場の使用目的に応じて照明を使い分けることが行われています。その例として、私たちに馴染みの深い蛍光ランプは、相関色溫度の違いによって(日本では)以下のような5種のタイプに分けて製造?販売されています。

公稱相関色溫度 6500 K ~ 2700 K に亙って、順に、晝光色、晝白色、白色、溫白色、電球色という呼び方で各種タイプが市販されています。具體的な色度範囲(相関色溫度および偏差の許容範囲)は右図をご覧下さい。?※2?

蛍光ランプの発光原理は、水銀蒸気を充填した発光管內で電極間放電を起こして紫外放射を発生させ、その紫外放射によって管壁に塗布された蛍光體を勵起して、可視域の光(蛍光)を発生させるものです。(蛍光勵起用の紫外成分は管外に漏れないようにカットされています。) 蛍光體の種類を選択することによって、蛍光発光の分光分布を変えることができますので、様々な光色の蛍光ランプを作製できる訳です。

最近発展の著しい一般照明用の LED 白色照明も、(蛍光ランプから LED ランプへの置き換え需要に対して)蛍光ランプのこの區分に準じて提供されることが多い様ですが、 LED 特有の事情から、區分が見直される方向にあるようです。?※3?

逆數色溫度

(相関)色溫度は、白色照明の光色をおおよそであっても一つの數値で表現できるという大きな利點がある訳ですが、複數の白色光の「色差」については、K (ケルビン)で表現される(相関)色溫度値の差ではうまく表現しきれません。黒體軌跡での色溫度目盛は、色溫度値が高くなる程、目盛間隔が狹く収斂して行き、一様にはなっていないからです。

(相関)色溫度差 ⊿TCP = 100 K である 2 種の白色光について、例えば、
10000 K と 10100 K の間の色差 ⊿E1 と、3000 K と 3100 K の間の色差 ⊿E2 とはかなり異なっていて、⊿E1 < ⊿E2 になっています。

これは、黒體の「溫度差」と「色差」の関係が、単純な比例関係にはなっていないからです。

このような事情から、(相関)色溫度値との関連の中で、白色光間の「色差」についても表現したい、というニーズに対して、「逆數(相関)色溫度 Reciprocal ( correlated ) color temperature 」 と呼ばれる指數が考えられています。

逆數(相関)色溫度は、(相関)色溫度の逆數の百萬倍として定義され、その単位は mrd または mrk で表示されます。?※4?

例えば、色溫度 TC = 2856 K の標準イルミナント A の逆數色溫度は TC-1 = 106 / 2856 = 350.1 mrd 、
相関色溫度 TCP = 6504 K の標準イルミナント D65 の逆數相関色溫度は、TCP-1 = 106 / 6504 = 153.8 mrd となります。?※5?
逆數(相関)色溫度の表示空間は、概略は均等色差空間とみなすことができ、逆數(相関)色溫度の差 ⊿TC-1 ( ⊿TCP-1 ) と色差 ⊿E との関係は(相関)色溫度の絶対値には概ね無関係とみなせるようになります。
逆數色溫度の差がおおよそ 5.5 mrd 以內であれば、(相関)色溫度値に関係なく人間の眼ではほぼ區別がつかない色差であると言われています。

主波長( λd

(相関)色溫度という概念は、(大雑把でもよいので)一つの數値だけで色味を連想できるという大きな利便性から世の中で広く使われていますが、ただ、その適用範囲はいわゆる白色光源に限定されます。

ネオンサインやクリスマスツリー飾りの赤や緑の LED などの有色光源について、その発光色を示すに際しても、2 つの數値 x , yで表現すれば、客観的で正確なのですが、白色光の場合と同様に、2 つの數字からその色を連想するのは簡単ではありません。やはり多少正確さは犠牲にしてでも一つの數字だけでおおよその色が連想できれば非常に実用的です。このような要求に応えるものが「主波長」です。?※6?

今、下の x y 色度図において、例えば F ( 0.32 , 0.51 ) という色があったとします。

白色點 W ( 0.333 , 0.333 ) からこの F に向かって直線を引き、更にそれをまっすぐ延長して行くと、単色光軌跡(馬蹄形の外周曲線部)に突き當たります。この點を S とすれば、この點 S には、或る波長の単色光の色度が一義的に対応していますので、この単色光の波長を以て、色 F の 主波長 ( λd ) とします。(下図の場合には點 S は 550 nm の単色光の色度點になっていますので、色 F の主波長は 550 nm ということになります。) 単色光の色は、誰もがお馴染みの虹の色の順番に並んでいて、波長から色を連想するのは比較的簡単ですから、主波長の値を聞けば、どんな色かがすぐ連想できる訳です。?※7?

補色主波長( λc

上記の色 F の場合とは別の、例えば M( 0.44 , 0.20 )という色の場合はどうでしょう。

白色點 W( 0.333 , 0.333 )から點 M に向かって引いた直線を延長して x y 色度図の外周に突き當たるのは、単色光軌跡ではなく、純紫軌跡です。

純紫軌跡との交點 N には、単色光は対応しておらず、色 F の場合のようにはいきません。このような場合には、この直線を逆方向に延長すると、點 G で単色光軌跡に突き當たります。この點 G には或る単色光の波長が一義的に対応していますので、この波長を以て、色 M の補色主波長 ( λc ) とします?!恧螆龊?、點 G は 508 nm の単色光の色度點になっていますので、色 M の補色主波長は 508 nm ということになります。

補色主波長の値 ( λc = 508 nm ) から、“直接的に” 色 M を連想することは難しいのですが、「補色」という特殊な関係を意識することにより、間接的ですが、 M という色を連想することが可能になります。本連載第 31 回での説明からお分かりいただけると思いますが、 x y 色度図は線形空間ですから、白色點 W を中心に正反対の位置に存在する色同士は厳密に物理補色の関係(2色を適切な比率で混色すると無彩色になる関係)にあります。

上図の場合、先ず、“補色”主波長という表示形式を取っていること自體から、その色度點は、x y 色度図上で、純紫軌跡を底辺とし、白色點 W を頂點とする三角形の領域內にある??? すなわち紫~赤紫~赤の範囲の色???であることが分かり、次に 508 nm の単色光は緑色で、その補色ということから赤紫(マゼンタ)色系統ということが連想できます。(主波長に比べて、補色主波長の場合は、連想プロセスがワンステップ増えるため、幾分回りくどい感じは拭いきれませんが???。)

以上のように、主波長、補色主波長は、色の心理的三屬性の色相に対応するものと言えます。

刺激純度 ( pe および pec

主波長(補色主波長)はその定義からわかりますように、その色と白色點 W とを結んだ直線上(およびその延長上)の色度點は、全て同じ値の主波長(補色主波長)の値を持つことになります。換言すれば、この直線上にある色はすべて同一色相であるということになります。

本連載第 29 回でお話ししましたように、x y 色度図では白色點 W から放射狀に外に向かうほど彩度が高くなっています。つまり、白色點 W から外周(単色光軌跡または純紫軌跡)までの直線距離( WS または WN )に対して、白色點 W からその色度點までの距離( WF または WM )の相対距離比( % )を刺激純度と定義すれば、この刺激純度の値は「彩度」を示すことになります。

なお、補色主波長の場合は、白色點 W からその色 M へ引いた直線を逆方向に延長しましたが、刺激純度については、直線をそのまま延長して突き當たる純紫軌跡との交點 N と白色點 W の距離を 100 % とします。

x y 色度図の外周(単色光軌跡と純紫軌跡)上の色は、全て刺激純度 100 % の最高彩度、白色點 W は刺激純度 0 % の最低彩度(無彩色)ということになります。

主波長(補色主波長)表記 と
色溫度(相関色溫度)表記 の利便性共通點と相補性

上述のように、主波長(あるいは補色主波長)の定義は、色溫度(相関色溫度)の定義と全く異なりますが、一つの數値から概略の色が比較的容易に連想できる、という利便性については共通しています。また、更にもう一つ別の數値を抱き合わせて表示すれば正確に色を表記できる、という點 ????? 相関色溫度( TCP )表記の場合には、黒體軌跡からの偏差( duv )、主波長 λd (補色主波長 λ c )表記の場合には刺激純度( pe または pec )?????も共通しています。
両者で異なっているのは、(相関)色溫度は黒體軌跡近傍の白色領域に対してのみ、また、(補色)主波長は有彩色領域に対して適用される、という補完的関係にあると言えます。?※8?

注釈

?※1?共感覚

その感覚本來の系統以外に屬する感覚反応を引き起こす現象を共感覚と言っています。本文中に説明した暖色?寒色はその典型例ですが、その他にも、黃色い聲(甲高い女性の聲は聴覚)、美味しそうな色の料理(美味しさは味覚)などの表現が挙げられます。

?※2?蛍光ランプの相関色溫度區分

日本では本文中での説明のように 5 つのタイプが市販されています( JIS Z 9112:2012 )が、別の區分で市販されている國もあります。例えば米國では、公稱相関色溫度が、6500 K ~ 2700 K の範囲で 6 段階に分けられています。

( ANSI C78.376-2001 Specifications for the Chromaticity of Fluorescent Lamps )

?※3? LED 等の固體照明における相関色溫度區分

近年、発展普及の目覚ましい LED を代表とする固體照明においては、相関色溫度區分が変更される方向にあるようです。

例えば米國國家標準( ANSI NEMA ANSLG C78.377-2011 Specifications for the Chromaticity of Solid State Lighting products )においては、従來の蛍光ランプの相関色溫度區分とできるだけ共通な區分を目指しながらも、固體照明光源の製造上の特殊な事情(歩留りの確保)もあって、當面は異なった區分が追加され、計 8 段階(一部、公稱相関色溫度値も変更)の區分となり、また、各區分の許容色度範囲の規定の仕方も変更されています。日本のJISにもこの影響が及ぶことが考えられます。

?※4?逆數(相関)色溫度の単位

mrd は micro - reciprocal - degree のことで、ミレッド と読み、
mrk は micro - reciprocal - Kelvin のことで、ミレック (または毎メガケルビン)と読みます。

?※5?標準イルミナント A および D65

標準イルミナントとは、物體色を観察する場合の標準照明條件として國際的に取り決められた照明光の分光分布特性で、” A ” は、熱放射型光源を代表するもの、” D65 ” は晝光(晝間の太陽光)を代表するものとして分光分布特性が數値で細かく規定されています。(本連載の第 29 回參照

?※6?主波長

主波長は、ドミナント波長( dominant wavelength )と呼ばれることもあります。

?※7? 主波長 λd と ピーク発光波長 λp

時折、「主波長 λd 」の意味を取り違えて、「ピーク発光波長 λp 」の意味で誤用している場合があるようですので、注意が必要です。

ピーク発光波長 λp とは、その光源の分光分布特性において、物理的に最も出力が大きい波長を指しています。従って、その波長 λp以外の波長域の分光分布特性の形狀がどんな特性であっても関係ありません(光源の「色」と直接の関係はありません)。しかし、主波長 λd は、本文中の説明のように、その光源の色、すなわち色度點( x , y )に対して決まるものです。

従って、物理的なピーク発光波長 λp が同じであっても、発光色(分光分布特性の形狀)が異なれば、主波長 λd は様々な値をとることになります。

?※8? 物體色への主波長表記の適用

色溫度表記と主波長表記の適用上の相違點にはもう一つあります。色溫度表記は、光源色(白色光)のみに適用でき、物體色には適用できませんが、主波長表記は光源色、物體色のいずれに対しても適用できます。光源色の場合は、本文中にも記しましたように、白色點 W を ( 0.333 , 0.333 ) にとることになっています。これに対して物體色の場合には、その物體を照明する光の分光分布特性に依存してその物體の色が変化しますので、照明光(標準イルミナント)自身の色度點を白色點 W とします。

つまり、照明光の色に対して、その物體がどの色相の方向に「腳色」したのか、という考え方になる訳です。

色溫度 と 主波長

光と色の話 第一部

光と色の話 第一部

第34回 色溫度と主波長

前回は色溫度および相関色溫度とはどういうものか、またその利便性についてお話ししました。
今回は、私たちの生活空間照明においての(相関)色溫度との関わりを説明します。
また、(相関)色溫度は「白色光源」にのみ適用できるものでしたが、有彩色光源に対しても、一つの數値のみで凡その色味が連想できると便利であるという同様な要求があります。
これに対して、「主波長(ドミナント波長)」という表現方法を説明致します。

人間の生活空間用照明の(相関)色溫度と心理効果

私たちの生活空間には、太陽光以外に様々な人工光源が使われています。生活空間の用途?目的に応じて、裝飾や什器備品だけでなく、その場をどのような光で照明するのかが、極めて重要です。

例えば、オフィスや教室など、活発に頭脳を働かせるに相応しい明るいスッキリした照明環境が求められる場合もあれば、喫茶店や家庭の居間、寢室などには、心理的にゆったりとリラックスした雰囲気が求められます。

このような照明空間の雰囲気作りに重要な影響を及ぼす要素が、照明光の色味(相関色溫度)と明るさ(照度)です。この 2 つの要素の組み合わせによって、私たちの感じる心理的印象は大きく変わります。

色が私たちの心理に大きな影響を與えることはよく知られています。特に基本的な心理効果として知られているのが、寒暖感(寒色、暖色)です。対象物の実際の物理的溫度には関係なく、赤~橙色系統の色は溫かみを、青~青紫色系統の色は寒冷感を覚えます。本來、溫度の感覚は人間の五感(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、觸覚)の內の觸覚で感じるもので、視覚とは別系統の感覚なのですが、視覚(色)を通じて心理的に溫度感を受け取っている訳です?※1?。

(相関)色溫度が低い照明光は、赤味がかって見えますので、心理的には溫かく感じ、(相関)色溫度が高い照明光は青白味がかって見えますので心理的には寒冷感を覚えます。(相関)色溫度値と心理的寒暖感とは、高低が逆の関係になっていることに注意が必要です。

右図のように橫軸に(相関)色溫度を、縦軸に照明の明るさ(照度)をとって、これらの組み合わせが人間の心理に與える影響を考えると、次のような傾向があると言えます。

(相関)色溫度が高めの白~青白い光色で、照度が低い暗めの照明の場合は、陰気な寂しい感じの雰囲気になりますが、同じ光色であっても照度が高い明るい照明になれば、清涼感のあるスッキリとした都會的な雰囲気の照明になります。例えば、デパートの化粧品売り場の照明はこのような照明になっていますね。

一方、(相関)色溫度が低めの赤味がかった光色で、照度が低めの照明の場合は、心理的に落ち著いた和んだ雰囲気を醸し出す照明になります。喫茶店や家庭の居間、寢室などの照明の雰囲気です。

ところがこの光色であっても照度が高くなれば、暑苦しい下品な感じを引き起こすような照明になってしまいます。

このように、心理的な快適性という面から評価すれば、右上図のように、(相関)色溫度と照度の組み合わせによって、全く逆方向に働くことになります。

蛍光ランプの光色

以上のように、様々な人間生活の場において照明の擔う役割は大きいものがあり、人間心理に大きな影響を與えます。従って、その場その場の使用目的に応じて照明を使い分けることが行われています。その例として、私たちに馴染みの深い蛍光ランプは、相関色溫度の違いによって(日本では)以下のような5種のタイプに分けて製造?販売されています。

公稱相関色溫度 6500 K ~ 2700 K に亙って、順に、晝光色、晝白色、白色、溫白色、電球色という呼び方で各種タイプが市販されています。具體的な色度範囲(相関色溫度および偏差の許容範囲)は右図をご覧下さい。?※2?

蛍光ランプの発光原理は、水銀蒸気を充填した発光管內で電極間放電を起こして紫外放射を発生させ、その紫外放射によって管壁に塗布された蛍光體を勵起して、可視域の光(蛍光)を発生させるものです。(蛍光勵起用の紫外成分は管外に漏れないようにカットされています。) 蛍光體の種類を選択することによって、蛍光発光の分光分布を変えることができますので、様々な光色の蛍光ランプを作製できる訳です。

最近発展の著しい一般照明用の LED 白色照明も、(蛍光ランプから LED ランプへの置き換え需要に対して)蛍光ランプのこの區分に準じて提供されることが多い様ですが、 LED 特有の事情から、區分が見直される方向にあるようです。?※3?

逆數色溫度

(相関)色溫度は、白色照明の光色をおおよそであっても一つの數値で表現できるという大きな利點がある訳ですが、複數の白色光の「色差」については、K (ケルビン)で表現される(相関)色溫度値の差ではうまく表現しきれません。黒體軌跡での色溫度目盛は、色溫度値が高くなる程、目盛間隔が狹く収斂して行き、一様にはなっていないからです。

(相関)色溫度差 ⊿TCP = 100 K である 2 種の白色光について、例えば、
10000 K と 10100 K の間の色差 ⊿E1 と、3000 K と 3100 K の間の色差 ⊿E2 とはかなり異なっていて、⊿E1 < ⊿E2 になっています。

これは、黒體の「溫度差」と「色差」の関係が、単純な比例関係にはなっていないからです。

このような事情から、(相関)色溫度値との関連の中で、白色光間の「色差」についても表現したい、というニーズに対して、「逆數(相関)色溫度 Reciprocal ( correlated ) color temperature 」 と呼ばれる指數が考えられています。

逆數(相関)色溫度は、(相関)色溫度の逆數の百萬倍として定義され、その単位は mrd または mrk で表示されます。?※4?

例えば、色溫度 TC = 2856 K の標準イルミナント A の逆數色溫度は TC-1 = 106 / 2856 = 350.1 mrd 、
相関色溫度 TCP = 6504 K の標準イルミナント D65 の逆數相関色溫度は、TCP-1 = 106 / 6504 = 153.8 mrd となります。?※5?
逆數(相関)色溫度の表示空間は、概略は均等色差空間とみなすことができ、逆數(相関)色溫度の差 ⊿TC-1 ( ⊿TCP-1 ) と色差 ⊿E との関係は(相関)色溫度の絶対値には概ね無関係とみなせるようになります。
逆數色溫度の差がおおよそ 5.5 mrd 以內であれば、(相関)色溫度値に関係なく人間の眼ではほぼ區別がつかない色差であると言われています。

主波長( λd

(相関)色溫度という概念は、(大雑把でもよいので)一つの數値だけで色味を連想できるという大きな利便性から世の中で広く使われていますが、ただ、その適用範囲はいわゆる白色光源に限定されます。

ネオンサインやクリスマスツリー飾りの赤や緑の LED などの有色光源について、その発光色を示すに際しても、2 つの數値 x , yで表現すれば、客観的で正確なのですが、白色光の場合と同様に、2 つの數字からその色を連想するのは簡単ではありません。やはり多少正確さは犠牲にしてでも一つの數字だけでおおよその色が連想できれば非常に実用的です。このような要求に応えるものが「主波長」です。?※6?

今、下の x y 色度図において、例えば F ( 0.32 , 0.51 ) という色があったとします。

白色點 W ( 0.333 , 0.333 ) からこの F に向かって直線を引き、更にそれをまっすぐ延長して行くと、単色光軌跡(馬蹄形の外周曲線部)に突き當たります。この點を S とすれば、この點 S には、或る波長の単色光の色度が一義的に対応していますので、この単色光の波長を以て、色 F の 主波長 ( λd ) とします。(下図の場合には點 S は 550 nm の単色光の色度點になっていますので、色 F の主波長は 550 nm ということになります。) 単色光の色は、誰もがお馴染みの虹の色の順番に並んでいて、波長から色を連想するのは比較的簡単ですから、主波長の値を聞けば、どんな色かがすぐ連想できる訳です。?※7?

補色主波長( λc

上記の色 F の場合とは別の、例えば M( 0.44 , 0.20 )という色の場合はどうでしょう。

白色點 W( 0.333 , 0.333 )から點 M に向かって引いた直線を延長して x y 色度図の外周に突き當たるのは、単色光軌跡ではなく、純紫軌跡です。

純紫軌跡との交點 N には、単色光は対応しておらず、色 F の場合のようにはいきません。このような場合には、この直線を逆方向に延長すると、點 G で単色光軌跡に突き當たります。この點 G には或る単色光の波長が一義的に対応していますので、この波長を以て、色 M の補色主波長 ( λc ) とします?!恧螆龊?、點 G は 508 nm の単色光の色度點になっていますので、色 M の補色主波長は 508 nm ということになります。

補色主波長の値 ( λc = 508 nm ) から、“直接的に” 色 M を連想することは難しいのですが、「補色」という特殊な関係を意識することにより、間接的ですが、 M という色を連想することが可能になります。本連載第 31 回での説明からお分かりいただけると思いますが、 x y 色度図は線形空間ですから、白色點 W を中心に正反対の位置に存在する色同士は厳密に物理補色の関係(2色を適切な比率で混色すると無彩色になる関係)にあります。

上図の場合、先ず、“補色”主波長という表示形式を取っていること自體から、その色度點は、x y 色度図上で、純紫軌跡を底辺とし、白色點 W を頂點とする三角形の領域內にある??? すなわち紫~赤紫~赤の範囲の色???であることが分かり、次に 508 nm の単色光は緑色で、その補色ということから赤紫(マゼンタ)色系統ということが連想できます。(主波長に比べて、補色主波長の場合は、連想プロセスがワンステップ増えるため、幾分回りくどい感じは拭いきれませんが???。)

以上のように、主波長、補色主波長は、色の心理的三屬性の色相に対応するものと言えます。

刺激純度 ( pe および pec

主波長(補色主波長)はその定義からわかりますように、その色と白色點 W とを結んだ直線上(およびその延長上)の色度點は、全て同じ値の主波長(補色主波長)の値を持つことになります。換言すれば、この直線上にある色はすべて同一色相であるということになります。

本連載第 29 回でお話ししましたように、x y 色度図では白色點 W から放射狀に外に向かうほど彩度が高くなっています。つまり、白色點 W から外周(単色光軌跡または純紫軌跡)までの直線距離( WS または WN )に対して、白色點 W からその色度點までの距離( WF または WM )の相対距離比( % )を刺激純度と定義すれば、この刺激純度の値は「彩度」を示すことになります。

なお、補色主波長の場合は、白色點 W からその色 M へ引いた直線を逆方向に延長しましたが、刺激純度については、直線をそのまま延長して突き當たる純紫軌跡との交點 N と白色點 W の距離を 100 % とします。

x y 色度図の外周(単色光軌跡と純紫軌跡)上の色は、全て刺激純度 100 % の最高彩度、白色點 W は刺激純度 0 % の最低彩度(無彩色)ということになります。

主波長(補色主波長)表記 と
色溫度(相関色溫度)表記 の利便性共通點と相補性

上述のように、主波長(あるいは補色主波長)の定義は、色溫度(相関色溫度)の定義と全く異なりますが、一つの數値から概略の色が比較的容易に連想できる、という利便性については共通しています。また、更にもう一つ別の數値を抱き合わせて表示すれば正確に色を表記できる、という點 ????? 相関色溫度( TCP )表記の場合には、黒體軌跡からの偏差( duv )、主波長 λd (補色主波長 λ c )表記の場合には刺激純度( pe または pec )?????も共通しています。
両者で異なっているのは、(相関)色溫度は黒體軌跡近傍の白色領域に対してのみ、また、(補色)主波長は有彩色領域に対して適用される、という補完的関係にあると言えます。?※8?

注釈

?※1?共感覚

その感覚本來の系統以外に屬する感覚反応を引き起こす現象を共感覚と言っています。本文中に説明した暖色?寒色はその典型例ですが、その他にも、黃色い聲(甲高い女性の聲は聴覚)、美味しそうな色の料理(美味しさは味覚)などの表現が挙げられます。

?※2?蛍光ランプの相関色溫度區分

日本では本文中での説明のように 5 つのタイプが市販されています( JIS Z 9112:2012 )が、別の區分で市販されている國もあります。例えば米國では、公稱相関色溫度が、6500 K ~ 2700 K の範囲で 6 段階に分けられています。

( ANSI C78.376-2001 Specifications for the Chromaticity of Fluorescent Lamps )

?※3? LED 等の固體照明における相関色溫度區分

近年、発展普及の目覚ましい LED を代表とする固體照明においては、相関色溫度區分が変更される方向にあるようです。

例えば米國國家標準( ANSI NEMA ANSLG C78.377-2011 Specifications for the Chromaticity of Solid State Lighting products )においては、従來の蛍光ランプの相関色溫度區分とできるだけ共通な區分を目指しながらも、固體照明光源の製造上の特殊な事情(歩留りの確保)もあって、當面は異なった區分が追加され、計 8 段階(一部、公稱相関色溫度値も変更)の區分となり、また、各區分の許容色度範囲の規定の仕方も変更されています。日本のJISにもこの影響が及ぶことが考えられます。

?※4?逆數(相関)色溫度の単位

mrd は micro - reciprocal - degree のことで、ミレッド と読み、
mrk は micro - reciprocal - Kelvin のことで、ミレック (または毎メガケルビン)と読みます。

?※5?標準イルミナント A および D65

標準イルミナントとは、物體色を観察する場合の標準照明條件として國際的に取り決められた照明光の分光分布特性で、” A ” は、熱放射型光源を代表するもの、” D65 ” は晝光(晝間の太陽光)を代表するものとして分光分布特性が數値で細かく規定されています。(本連載の第 29 回參照

?※6?主波長

主波長は、ドミナント波長( dominant wavelength )と呼ばれることもあります。

?※7? 主波長 λd と ピーク発光波長 λp

時折、「主波長 λd 」の意味を取り違えて、「ピーク発光波長 λp 」の意味で誤用している場合があるようですので、注意が必要です。

ピーク発光波長 λp とは、その光源の分光分布特性において、物理的に最も出力が大きい波長を指しています。従って、その波長 λp以外の波長域の分光分布特性の形狀がどんな特性であっても関係ありません(光源の「色」と直接の関係はありません)。しかし、主波長 λd は、本文中の説明のように、その光源の色、すなわち色度點( x , y )に対して決まるものです。

従って、物理的なピーク発光波長 λp が同じであっても、発光色(分光分布特性の形狀)が異なれば、主波長 λd は様々な値をとることになります。

?※8? 物體色への主波長表記の適用

色溫度表記と主波長表記の適用上の相違點にはもう一つあります。色溫度表記は、光源色(白色光)のみに適用でき、物體色には適用できませんが、主波長表記は光源色、物體色のいずれに対しても適用できます。光源色の場合は、本文中にも記しましたように、白色點 W を ( 0.333 , 0.333 ) にとることになっています。これに対して物體色の場合には、その物體を照明する光の分光分布特性に依存してその物體の色が変化しますので、照明光(標準イルミナント)自身の色度點を白色點 W とします。

つまり、照明光の色に対して、その物體がどの色相の方向に「腳色」したのか、という考え方になる訳です。

色溫度 と 主波長

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